日本カレドニア学会 2021年度 第1回研究会のおしらせ

日時:2021年7月10日(土) 15:00~16:30
形態:Zoomでのオンライン形式 (ホスト佐藤伴近氏)
発表者:谷岡健彦氏(東京工業大学)
論題:「Roughなギリシャ悲劇-David GreigのThe Eventsについて」 

なお、研究会に参加を希望される方は、佐藤伴近氏の次のアドレス tmchk.sato–at–gmail.com(–at– を @ に置き換えてください)まで連絡をお願いします。連絡をいただいた方に、Zoomの招待メールをお送りします。参加ご希望の方の連絡締め切りは、6月30日(水)とします。

発表要旨

今年で、2011年の東日本大震災の発生からちょうど10年になる。あの巨大な津波と、その後の福島原子力発電所の事故がもたらした被害は、忘れようとしても容易に忘れられるものではないが、同じ年の夏に、ノルウェーで世界を大きく揺るがす事件が起きたことはまだ記憶に留められているだろうか。77名もの人びとが凶弾の犠牲になったウトヤ島での銃乱射事件である。
 スコットランドの劇作家David Greigは、この事件に敏感に反応した。発生から2年後の2013年に、The Eventsという作品を発表している。舞台設定をノルウェーからスコットランドに移してフィクションに仕立ててあるものの、ある銃乱射事件の実行犯と被害者を主人公にした劇である。
 リベラルな政治思想の持主であるデイヴィッド・グレッグにとって、ノルウェーの民主主義のあり方は仰ぐべきモデルのひとつであった。そのような国から、排他的な自民族中心主義の信奉者が出現したのはなぜなのかという問いが、グレッグを戯曲の執筆に向かわせたのだろう。本作で彼は、このように悲惨な事件を共同体はいかに受け止めるのかを、自らが提唱するRough Theatreという手法を用いて探求している。
 2019年11月に、この作品が東京の新国立劇場で上演された際、私は戯曲の翻訳を担当した。戯曲から舞台を作り上げていく過程に立ち会うと、ただ活字を読んでいるだけでは気づかないことが見えてきたりもする。こうした経験もふまえつつ、本発表ではグレッグの劇の特色を分析したい。

発表者

谷岡健彦(たにおか・たけひこ)氏

専門分野:現代イギリス演劇
業績その他:著書に『現代イギリス演劇断章』(カモミール社)、翻訳書にコリン・ジョイス『「ニッポン社会」入門』『「アメリカ社会」入門』(ともにNHK出版)がある。デイヴィッド・グレッグ『黄色い月』、『あの出来事』など、現代イギリスの戯曲翻訳も手掛ける。俳人協会会員。句集『若書き』(本阿弥書店)。